Your City is Good.

東京武蔵野シティFCの観戦記+αのブログ

大引啓次にあと1打席を。

パリーグセリーグも各チーム残り20試合を切りながら、依然として優勝・CS争いは激しい。
  一方、ヤクルトスワローズはといえば、52勝76敗2分の借金24(9月7日現在)で負け越しが決定。5位と9ゲーム差を付けられCS進出も完全消滅はおろか、最下位も免れない状況である。チーム打率とチーム防御率は12球団ワースト。悲しいデータの中で若き大砲村上宗隆と山田哲人のタイトル奪取と来年へ向けた若手の成長が数少ない消化試合の楽しみになっている。

若手育成に取り組んだ2019年。
  今年のスワローズは全体的に若返りを図ろうとする動きが見られた。内野は怪我人の影響もありその動きは顕著で、開幕から全試合出場の村上を始め廣岡大志、奥村展征、太田賢吾を積極起用。控えには川端慎吾大引啓次、荒木貴裕らベテラン勢が控える構図となった。前年度規定打席に到達した西浦直亨坂口智隆が戦列を離れたとはいえ、大幅な陣容変更だ。結果的には大型連敗もあり、起用した若手でも廣岡、奥村はなかなか結果が出ない時期もあるなど全てがうまくは行かなかったが、来年以降に目を向けての準備期間と考えれば今年の最下位なんて安いもんだと思う。外野なんてもっと高齢化が進んでいるのに今年も結局去年とほぼ同じメンバーだったことには触れないでおく。

4000打数という、大きな壁。
    さて、日本プロ野球において一つの規定がある。4000打数という規定だ。通算打率の計算では、この数字をクリアした選手でないとランキングには反映されない。首位打者の記録をあれだけ獲得したイチローも、NPBでの打数は4000に届いていないため、国内においては通算打率ランキングに載らないのは有名な話。青木宣親が昨年、4000打数に到達しレオン・リーの通算打率首位を久々に塗り替えたのも記憶に新しい。
  4000打数の壁は厚い。打席数とは違い、単純に積み上がる数字ではない。四球や犠打はカウントされず、純粋な安打または凡退数の通算となる。したがって、長く一線級でプレーした選手でないと達成することは難しい。近年の主なスワローズ在籍経験者での到達者は現役の青木と坂口のほか土橋勝征宮本慎也相川亮二飯田哲也古田敦也など、長年レギュラーだった選手のみだ。1000試合以上出場した選手でも真中満バレンティン川端慎吾畠山和洋らは到達していない。最も惜しかったのは小早川毅彦の3997打数。あと1試合スタメン出場していれば、という記録だ。
   そしてこの数字に、今最も近い男がヤクルトにいる。

その名は大引啓次、通算打数は3999打数である。

  先日1000本安打を達成したから、打率は.250を僅かに超えている(.251。3999-1004)
そしてあと1打数で、その記録はプロ野球の歴史になお刻むことができる。

しかし、その記録の達成が危ぶまれている。
9月5日に塩見泰隆と入れ替えに登録を抹消されたのだ。確かに、今年の大引は2割をわずかに超える打率であり、来年のために若手を起用したい小川監督の気持ちも十分理解できる。しかしだ。3999打数と4000打数の違いはあまりにも大きいだろう。(ちなみに、僅かに届かなかった先述の小早川は法政大の先輩にあたる。)

いぶし銀であるからこその、個人記録の意義。
  大引は2015年にファイターズからFAで加入してきた。2009年の藤本敦士以来のFAでの加入選手。2010年代も半ばだというのに応援歌の元ネタがアイアンリーガーという時代錯誤に苦笑いもした。その応援歌の影響か1年目は不振に怪我。2年目は持ち直したが3年目以降は怪我に泣きなかなか期待通りの活躍はできていないのも事実ではある。ポジションも本来の遊撃手ではなく、三塁手での出場が主となった。しかし、安打がでなくとも四球での出塁、確実に決める犠打、経験の浅い内野陣の中で光る堅実な守備などチームプレイに徹することによる貢献度は小さくない。そして今年は16連敗を止めた決勝タイムリーも印象的だ。自己犠牲的なプレーができる選手だからこそ、四球や犠打がカウントされない「打数」という数字が意味を持つと思うのだ。

   チーム状況・今年の成績・年俸を考えても、来年もチームに在籍する可能性は高いだろう。ましてやベテランに優しいヤクルトだ。とはいえ、ベテランの去就は楽観視できない。来年は今年以上にベンチスタートも増えるだろう。
しかし、今年中でも、来年でも、まずは4000打数の大台をクリアし、それだけでなくまたスタメンに返り咲いて欲しいと個人的には思っているのだ。

 

この記事はnoteでも掲載しております。